世の中には、性的嗜好の一種としてTS(性転換=Transsexualism)というものが存在する。
このゲームは、男性のプレイヤーが女性プレイヤーとして行動することから、TS趣味を満たすためのゲームとしての側面を持つ。
では、この作品はTS用と言い切って良いのだろうか?
実は、この問題はゲーム開発に着手する前*1からずっと考えてきた。
じっくりと考えた結果、その質問への答はノーであるという結果を得た。
淫欲少女抄という作品の特異性は、男性主人公が美少女体を得て活動する過程において、男と交わり快楽を得るという「女性的行動」と、可愛い女の子と仲良くなると嬉しいという「男性的行動」が完全に分離されずに同居しているところにある。つまり、「私=プレイヤー」は、1つの状況に対して「男性視点」「女性視点」の双方で関わるのである。
もし、本当に性転換を求めているとすれば、そこには「女性視点」しか存在しないはずである。「男性視点」の導入は、本来なら忘れたいはずの「自分は男である」という事実を思い起こさせてしまう。
では、TSではないとすれば、淫欲少女抄は誰のための作品なのだろうか。
おそらくそれは、女の子という存在が好きで好きでたまらない男性のための作品なのだろう。あまりに好きでありすぎて、自分が女の子であったら……という妄想まで弄びつつ、それでも根は女の子が好きな「男性」で有り続けるような人のための作品なのだろう。
だから、このゲームでは女の子と愛し合うシチュエーションの割合がかなり多い。たとえば、電車痴漢のシナリオは、通常なら男の痴漢に襲われる展開だけで終わるところだろうが、このゲームでは男性相手の通常痴漢の他に、女性専用車で進行する女性による痴漢シナリオが別途存在する。
つまり、このゲームはプレイヤー自身が女の子であることを楽しみ、そして他の女の子と向かい合うことも楽しむという性を超越した作品なのである……、たぶんね。*2