デザインメモ/200.努町とは?で書いた通り、淫欲少女抄とは若き日にノート等に書き連ねた妄想小説を、リニューアルしてゲームの形にしたものである。
この小説は、必ずしも綺麗にまとまっていないし、きちんと完結もしていない。しかし、大まかに言えば、以下のようなシリーズを構成していた。(第1部のような表記は便宜上付けたもので、本来は存在しない)
美少女の身体をもらった主人公が、仮想の街で好きなように快楽行為を行って過ごす……というものである。主人公は、19歳の浪人生と設定され、学校にも行かないで好きなことができた。
この物語で特に大きな存在感を持つのは少女クラブであり、少女クラブに行けば個性豊かな少女達と楽しむことができた。
本来、主人公の「彼氏」として用意された中里徹也や、好きでもないのに強引に来る浦賀鉄平は、主人公の相手役として用意されたにも関わらず、実際にはほとんど出番が無く、女の子達と遊んでばかりいた。(そのあたりの「ねじれ」はデザインメモ/300.TSゲーム?で書いた通り)
しかし、ゲーム版の「冴とのデート」に出てくるタバコ屋のオヤジはこの小説版から存在し、極めて印象的な存在として記憶に残っていたりする。
小説版で存在しながら、ゲーム版で意図的に削った主な要素は以下の2点である。
淫欲少女抄で主人公はアダルトビデオを好み、自ら出演するだけでなく監督まで行うようになった。もちろん、監督しても主要な出演者は自分となる。
その作品から主人公の価値を見出した大財閥の持ち主が、主人公を高級な性的サービスを行う「館」の女主人としてスカウトする。
この「館」では招かれた客は給仕を行うメイド達を見て品定めし、指名を行うことで食事の後でメイドを抱けるシステムになっている。特に重要な客や、功績のあった社員など、特別な者達しか来ることが許されない場所である。
そして、ここには1つの絶対的なルールがある。メイド達をかしずかせる女主人を客は指名することができない。しかし、客がメイドに満足できなかった場合、女主人は客が満足するまで相手をしなければならない。女主人がそれを拒絶することはできないのである。
(まさか、このような文章を書く日が来るとは思わなかったので、このルールは、遠野秋彦名義で書いた小説「イーネマス!」の終盤で使用した。この小説は、2人の男が異世界に転生し、1人は若い身体をもらって奴隷から王にまで上り詰め、もう1人は美少女の身体をもらって性的体験を深めながら表と裏の社会を遍歴するという長い小説である)
しかし、この淫欲淑女抄はあまり成功したとは言えない。なぜなら、この「館」の主役はメイド達であって、主人公ではないからだ。メイドを支配している主人公は、好きなようにメイドを抱けるが、そこにはあまり緊張感はない。かといって、客のクレームはそうそう起こることではない。
これをゲーム版として作成するとすれば、高級秘密娼館運営シミュレーションのような形にして、運営そのものを楽しむ題材にすると同時に、主人公もメイドに扮して性的サービスに加わる必要があるだろう……と考えている。
別人の身体に自分の意識を移し替える「意識転移」という架空の技術が導入された物語である。
女主人に飽きていた主人公は、財閥の研究所が作り出した意識転移装置の実験台にになる。その結果、ごく普通の女子高生の身体を自由に乗っ取り、エッチ行為を楽しめるようになった。
この設定のポイントは、本来家族を持たない主人公が近親相姦を実行可能になるという点にある。実際に、乗っ取った身体の持ち主の弟や父と実際にやって興奮を得たと記憶する。
しかし、これも上手く行ったとは言えない。別の身体、別の立場でエッチ行為を行うことの刺激に飽きれば、それで終わってしまうのである。
「館」のオーナーである宮川老の死から始まり、遺産相続争いに巻き込まれ、監禁調教もされ、「館」を含む性的サービスの経営者としてやっていこう……という話だったはずなのだが、あまり続いた印象がない。
やはり、経営者はつまらない……、ということだろう。
「意識転移」の技術を全面的に使って、主人公の継承性を断ち切った新展開となる。
このシリーズでは、神聖霧島女子高等学院という山の中の全寮制の学校が主要な舞台となる。この学校は、金のない少女に教育を受けさせる代わりに、少女愛好家の理事達に性的なサービスを行うことを目的として作られている。主人公は理事の1人だが、「意識転移」の技術によって、秘密裏に自分が「少女」になって少女として快楽を体験することを望む。
このストーリーは、経営者のような上の立場ではなく、実際に快楽行為を強要される下の立場に主人公を立たせることで、刺激的であることにある程度成功した。
ある程度成功した、淫欲理事編のモチーフを引き継ぐ形で書かれた。
このシリーズで、「意識転移」と「望むとおりの肉体の生成」の技術は試作品レベルで個人所有可能な水準に落ちてくる。このような個人用の意識転移装置をPMK(パーソナル・メタモルフォーゼ・キット)と呼ぶ。
主人公は、このような技術を試用することを持ちかけられた男性となる。主人公は自分の部屋の中で、美少女の身体をつくり、その身体に入って様々な体験を行ってみる。
この装置は、男から少女体へ意識を転送した後、男の意識は止めておき、元に戻るときに少女体側の意識を上書きする。そのような機能性の必然上、男側の意識を止めない場合、自分の意識が2つに別れ、男の自分と少女の自分が存在することになる。
ちなみに、フォークガールの「フォーク」とは意識の複製を作る行為を表現する。由来はUNIXシステムコールのforkより。
これにより、自分と自分が交わり、処女を失うという過去のストーリー上あり得なかった状況が起こる。
だが、その後はそれほど大きな刺激もなく、惰性に落ちていきフェードアウトしてしまった。
愛美とは、主人公が「館」の奥様になって3ヶ月ぐらいの時点で作られた意識の複製を持つ少女である。それを、別の人格、意識を持つ男性主人公が調教していくという、ある種究極の「自分で自分を調教する」倒錯した展開のストーリー。
しかし、これも過激度が行くところまで行くと、そこで終わってしまった感がある。
クタラという宇宙的な犯罪者が地球に潜伏し、主人公(第1部から継続する女性主人公)らを性的な奴隷にする。それを使って、性的な快楽を楽しむ様々な仕掛けを持ったハーレムを作り出そうとする。
(クタラについては、オルランドと裏切り者クタラというごく短い小説がある)
そのまま話は囮捜査編に分岐し、ヤクザが行う性奴隷としての人身売買の調査への囮捜査に出て、そのまま外国に売られてから助け出され、帰国する。
クタラの奴隷という立場は継続される。
ここで、主人公は人気AV女優として、たくさんのファンを集める。そして、ファン達を集めたイベントで彼らのスペルマを集め、それによって父親の分からない子供を妊娠させられる。
これは、ゲーム版のシナリオ案にあるAVエンディング案の原点となっている。
更に、クタラは生まれてくる娘に主人公の意識を転移させ、幼いうちから与えられる性的な英才教育を主人公自らの体験させるという構想すら示す。
しかし、クタラは逮捕され、そのような構想は実践されずに終わる。
ある程度まとまった形でのシリーズは、このフレンド編が最後となる。過激度が限界に達してしまった以上、終わるのも当然の成り行きだろう。このあと、構想されるのは続編ではなく、公開された淫欲少女抄という「物語の語り直し」へと変化し、ゲーム版の企画へと続く。